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制度を活用する企業が急増!企業版「ふるさと納税」のしくみとメリット

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この記事のポイント

  1. 企業版「ふるさと納税」は、国が認定した自治体の地方創生プロジェクトに対し寄附を行なった企業が税額控除を受けられる制度
  2. 通常の寄附に対する損金算入(約3割)に加えて寄附額の約6割に相当する税額控除を受けられるため、企業の実質的な負担は1割程度
  3. 2020年度税制改正によって企業側の実質負担が約4割から1割程度にまで圧縮されたことから、寄附件数・金額とも急増
  4. 制度の利用により、企業には「社会貢献やPR効果」「自治体とのパートナーシップや人材育成」といったメリットがある

2016(平成28)年に新設された企業版「ふるさと納税」は、2022(令和4)年度の寄附総額が約341億円に達するなど、制度を利用する企業が急増しています。

 

この記事では、企業版「ふるさと納税」の概要やメリット、利用時の留意点について解説します。

1 企業版「ふるさと納税」のしくみと税制優遇措置

制度のしくみ

企業版「ふるさと納税」(正式名称:「地方創生応援税制」)とは、国が認定した自治体の地方創生プロジェクトに対し、2025(令和7)年3月31日までに寄附を行なった企業が税額控除を受けられる制度です(図表1)。

図表1 企業版「ふるさと納税」のしくみ

これらの地方創生プロジェクトは、しごと創生やまちづくり、関係人口の創出、働き方改革など幅広く展開されており、自治体は賛同する企業からの寄附をもとに事業計画を推進します。

一方で企業側も、税額控除によって実質的な自己負担額を抑えつつ、寄附によるさまざまなメリットを享受できるため、お互いにwin-winの関係を構築できます。

税制優遇措置

個人のふるさと納税と同じく、企業版「ふるさと納税」にも税制優遇措置が設けられています。

 

元々、法人が国や自治体に対して寄附を行なった場合には、全額損金算入によって約3割の税負担が減少します。それに加えて企業版「ふるさと納税」では、寄附額の約6割に相当する税額控除を受けられるため、企業の実質的な負担を1割程度に収めることができます(図表2)。

図表2 企業版「ふるさと納税」の税制優遇措置のしくみ

2 寄附件数・総額増加の理由と企業のメリット

利用企業増加の背景

企業版「ふるさと納税」による寄附実績は近年大幅に増加しており、2022年度の寄附総額は前年度比で1.5倍超、寄附件数も8,390件まで達しています(図表3)。

図表3 企業版「ふるさと納税」の寄付実績の推移

増加の背景としては、2020(令和2)年度税制改正によって税額控除が拡充され、企業側の実質負担が約4割から1割程度にまで圧縮されたことが大きいでしょう。

また国の認定手続きが簡略化され、自治体側の制度利用が促進されたことで、寄附先の選択肢が広がっていることも後押しになっていると考えられます。

 

さらに現在では「人材派遣型」も創設されており、従業員を自治体へ派遣する場合には、人件費相当額を含めて寄附金として取り扱うことが可能です。

企業側のメリット

(1)社会貢献やPR効果

企業版「ふるさと納税」による寄附を通じ、環境保全やまちづくり、SDGs活動などの取り組みを支援するなど、地域に対する社会貢献が可能となります。

 

また自社と親和性の高いプロジェクトに寄附することで、税制優遇措置を受けながら、企業のイメージアップや認知度向上を追求することも可能です。

企業規模にかかわらず税制優遇措置を受けられるうえ、納税額の大きな企業ほど多額の寄附が可能となるため、大企業でも効果的なPR戦略を展開しやすくなるでしょう。

(2)自治体とのパートナーシップや人材育成

企業版「ふるさと納税」では、寄附をきっかけに自治体と連携し、定期的に合同勉強会やミーティングを開催するなど、地方創生プロジェクトの推進に向けて伴走するケースが一般的です。

またプロジェクトのなかには、計画立案の段階から企業が参画する事例もあり、制度の発展とともに「官民連携」も多様化しています。

 

さらに自治体との関係性を強化することで、地域社会との交流が促進され、企業の人材育成やモチベーションアップにも効果的です。

(3)新事業展開や技術革新

自治体との連携が強化されることで、新たなビジネスチャンスの創出も期待されます。自社事業と関連性の高いプロジェクトへの支援を通じて、技術開発やニーズの掘り起こしが加速し、新事業展開の足掛かりとなるケースも少なくありません。

 

中には自社の事業活動や地域支援の取り組みを強化するために、企業側がプロジェクトを立ち上げ、寄附先の自治体を公募する事例もあります。

3 制度利用時の留意点

(1)返礼品や経済的な見返りは受けられない

個人版とは異なり、企業版「ふるさと納税」では、寄附先の自治体から返礼品を受け取ることはできません。

 

また公共事業の入札や許認可に対する便宜を図ってもらうなど、寄附の見返りとして、経済的な利益を受けることも禁止されています。

(2)寄附額や寄附先に制限がある

企業版「ふるさと納税」では、寄附額の下限が設定されており、1回あたり10万円以上の寄附が対象となります。

 

また国による認定を受けた事業のみが対象となるため、それ以外のプロジェクトに対する寄附は税額控除を適用できません。また企業の本社が所在する自治体への寄附についても、制度の対象外となるためご注意ください。

(3)赤字企業は負担割合が増加

企業版「ふるさと納税」による税額控除については、法人税等から控除されます。

したがって、これらの税額が発生しない赤字企業については、税額控除の恩恵が受けられず、寄附による実質的な負担額も増加することとなります。

 

また税額控除額には上限があるため、自社の利益状況や納税額をシミュレーションしたうえで制度を有効活用しましょう。

この記事に記載されている法令や制度などは2024年4月時点のものです。 法令・通達等の公表により、将来的には制度の内容が変更となる場合がありますのでご注意ください。

【著者】

服部 大(はっとり だい)

服部大税理士事務所/合同会社ゆとりびと 代表社員

税理士・中小企業診断士


2020年2月、30歳のときに名古屋市内にて税理士事務所を開業。

平均年齢が60歳を超える税理士業界の若手税理士として、顧問契約にこだわらない税務サービスを提供しています。またライター業務や講演活動にも力を入れており、「わかりにくい税金の世界」を噛み砕いて伝えられる専門家を志しています。

事務所ホームページ:https://zeirishihattori.com

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