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中小企業経営者の資産運用② 実施時のポイントとリスク管理

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この記事は6分で読めます

この記事のポイント

  • ① 資産運用を行う際の基本的な考え方は、(1)目標を明確にする、(2)労力が少ないものを中心に考える、(3)ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンのどちらを求めるかを考える、(4)期間を考える、(5)ルールを決める
  • ② 資産運用はリスク管理(長期・分散・積立)が重要
  • ③ 法人におすすめの資産運用方法は、不動産・投資信託・生命保険
  • ④ 変額保険は、運用実績に応じて満期時の満期保険金や、被保険者の死亡時の死亡保険金が変動する

1 資産運用を行う際のポイント

(1) 経営者や法人が資産運用を行う際の基本的な考え方

経営者ならびに法人が資産運用を行う際には、以下のようなことを考えましょう。

  • (1) 目標を明確にする
  • (2) 労力が少ないものを中心に考える
  • (3) ハイリスク・ハイリターンを求めるのか、ローリスク・ローリターンを求めるのかを考える
  • (4) 期間を考える
  • (5) ルールを決める

まず、目標を明確にすることが必要です。

例えば、「2年後に、毎月100万円、年間1,200万円の安定的な収入を得ることができるようにする」などです。

そして、目標達成に向けて、どのような運用が良いのかを考えていきます。

資産運用は、労力が少ないものを中心に考えましょう。

結果として多額の運用益が得られるとしても、労力が莫大になるのであれば、本業やプライベートが犠牲になってしまいます。

また、ハイリスク・ハイリターンを求めるのか、ローリスク・ローリターンを求めるのかを考えましょう。

一般的に、ハイリターンのものはハイリスク、ローリターンのものはローリスクといわれます。

ただし、そうではないものもありますし、運用だけにリスクがあるわけではなく、そもそも経営は常にリスクにさらされていますので、経営者や法人のリスクへのスタンスを考慮し、リスクを事前に認識したうえで資産運用を行いましょう。

さらに、期間を考えることも重要です。

すぐに資産を増やすことはできないため、例えば「短期間だとハイリスク・ハイリターンのもの、長期間だとローリスク・ローリターンのもので運用を考える」など、期間を考慮した運用も必要です。

上記のことが定まったら、ルールを決めましょう。

値上がりや値下がりに一喜一憂せず、例えば「時価が何%以上下がった場合にはトータルリターンがプラスであれば入れ替える」などのルールを決めて運用することが望ましいでしょう。

(2) 資産運用の相談は誰にするとよいのか

資産運用の相談相手は、銀行、証券会社、FP(ファイナンシャルプランナー)、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)、不動産会社、会計事務所、保険会社、保険代理店などが挙げられます。

ただし、それぞれ扱える商品や知識のある商品などが限られているため、色々な方にお話を聞き、運用資産のラインナップ、資産運用に関する知識、自分が扱っていない場合は扱っている方を紹介してくれる人脈、担当者が実際にその資産運用を行っているかどうか、相性などを確かめたうえで、実際に相談する方を選ぶのが良いでしょう。

また、資産運用には長期的な視点が必要ですので、数年ごとに担当者が異動になるところよりは、ずっと担当者と付き合っていけるようなところが望ましいと考えます。

2 リスク管理の重要性

資産運用は基本的にリスクが伴うため、リスク管理が必要です。

具体的には、「長期・分散・積立」が重要とされています。

まず『長期』ですが、投資を長期間続けると、分散投資や複利の効果(資産形成・運用で得た利益を再び投資することで利益が利益を生み、さらに資産が増えること)などとあいまって、元本割れリスクの低減が期待できます。

次に『分散』ですが、投資する資産・国・業種、投資タイミングなどを統一せず、複数に分けて投資することで、価格変動リスクを軽減できます。

最後に『積立』ですが、決まった金額を続けて投資することで、価格が安いと相対的に購入数量が増え、逆に価格が高いと減るため、購入単価が平準化され、期間が長くなればなるほど購入単価変動リスクを軽減できます。

3 資産運用にはどんな方法があるのか

(1) 法人におすすめの資産運用方法は

法人におすすめの資産運用方法は、不動産・投資信託・生命保険だと考えます。

(2) 各種資産運用方法の特徴

不動産投資は家賃収入(インカムゲイン)と売却収入(キャピタルゲイン)を得られます。

ただし、不動産を所有している限り、値上がりや値下がりは含み損益に過ぎず、売却によるキャピタルゲインは生じないため、家賃収入によるインカムゲインを考えましょう。

投資信託も配当収入(インカムゲイン)と売却収入(キャピタルゲイン)を得られます。

値上がりや値下がりについては、不動産投資と同様です。

投資信託は、投資のプロであるファンドマネージャーが組み入れる銘柄などを選べば、その選択自体に分散投資などが考慮されています。

変額保険は、運用実績に応じて満期時の満期保険金や、被保険者の死亡時の死亡保険金が変動します。

(3) 資産運用方法を選択する際のポイント

不動産は、一物多価といわれるように様々な価格があるため、購入価格にしろ賃料にしろ、適正な水準を把握することが重要です。

また、自社保有自社使用物件を賃貸に出し、自社はそこより賃料の安い賃借物件にするということも考えられます。

投資信託は、数え切れないほどの商品があります。

安定的に高い利回りの実績を残しているものもありますので、安全性(元本が減らないか)・収益性(どれくらい利益が期待できるか)・流動性(お金を引き出しやすいか)のバランスを考慮しながら選びましょう。

法人向け生命保険では、変額保険の受取保険金額が運用実績に連動します(基本保険金額は保証されます)。

契約時に約款や資料等で保険商品の特別勘定の種類や運用方針を確認しておきましょう。

【著者】

國村 年(くにむら みのる)

公認会計士・税理士・香川大学大学院客員教授・日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格者・戦略MG インストラクター


関西学院大学経済学部卒業。1996年から監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)、2007年から小谷野公認会計士事務所に勤務したのち、2011年に香川県高松市で國村公認会計士事務所開業。贈与・相続、事業承継、M&A・組織再編、棚卸のコンサルティングを中心に行っている。著書・執筆は、『誰も教えてくれなかった実地棚卸の実務Q&A』(中央経済社)など多数ある。

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